ネズミ鋳鉄の化学組成、その溶解方法及び特徴・熱曲線より判定した良い湯、悪い湯の冷却曲線例
1.化学成分 Fe(鉄)90%以上 その他主要5元素(C,Si,P,S,Mn)10%以下
下表はネズミ鋳鉄の化学成分による分類材質名 | CE値 | C% | S% | 強度(抗張力kg/mm2以上) |
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FC300 | 3.55~3.65 | 3.10~3.20 | 1.20~1.50 | 30kg/mm2以上 |
FC250 | 3.85~3.95 | 3.30~3.40 | 1.55~1.80 | 25kg/mm2以上 |
FC200 | 4.05~4.20 | 3.45~3.55 | 1.80~2.00 | 20kg/mm2以上 |
FC150 | 4.25~4.35 | 3.60~3.70 | 1.80~2.20 | 15kg/mm2以上 |
ダクタイル(ノジュラー)鋳鉄の化学成分(鋳放し)
CE値=炭素当量(Carton・Envivalentの略)=TC+1/3Si+1/3P
ネズミ鋳鉄中に含有される全炭素Si及びPの複合された影響の度合を炭素量に換算して表したもの
鋳鉄の組織
鋳鉄の組織はその資料を検鏡すると強度に大きく影響するC(炭素)の状態図によってA型黒鉛、B型黒鉛、C型黒鉛、D型黒鉛に分かれる。又、基地(マトリックス)の状態がパーライト、及びフェライトの出方により機械的、物理的性質も異なる。
又、P,S,Mnは、人体に例えればミネラルのような役目をして黒鉛の核の生成を助長したり阻害元素を除去したりして、その量は多すぎても悪影響ですので適量が必要です。
2. 溶解方法・現在行われている溶解方法には、還元溶解(キューポラ熱源コークス)と酸化溶解(電気炉、熱源電気)の2通りがある。
イ)キューポラ溶解
還元溶解であるので、そのキューポラの炉径に合った風量、風圧、コークス比等を決定し、その炉径に合った出湯量であるか否かを確認する。基本的操業方法は穏やかに風を送り、湯溜まり部をゆったり取り前炉にて十分な攪拌ができるように湯を70%以上溜めてから出湯する事が肝要である。又、熱源コークスには、S等ミネラル部分に相当する物が適量に含まれている為、その溶湯は丈夫な鋳物が出来上がります。
ロ)電気炉溶解
酸化溶解(溶湯の対流による空気の巻き込み)であるので、基本的に脱酸処理が必要である。
代表的な脱酸剤としては、SiC(炭化珪素)があり分解して脱酸処理します。
SiC → Si+C+2000kcal
FeO+SiC → Fe+Si+CO
3FeO+SiC → SiC2+3Fe+CO
この処理によって機械的、物理的性質をキューポラ溶湯に近づけて出湯します。又、熱源と投入材料が違う為S,P,Mn等、微量元素(ミネラル部分)が非常に少なく、その対処方法によってその溶湯の性状が代わります。
(例・・キューポラ溶解に比べ電気炉溶解はSが少ない為その欠陥として”引け”が生じその対策としてFeS(硫化鉄)を添加します。)
3.特徴
黒鉛組織が片状であり、その形態が大小、長短、及びその黒鉛の方向性により機械的、物理的性質が異なる。
その溶湯中に含有される黒鉛形状、酸化度合、各種ガス、含有量などにより鋳物の代表的な不良である、チル、ヒケ巣等が表れる。又、マトリックスのパーライト、フェライトの量によりその鋳物の強弱が変わる。
最近ではこのネズミ鋳鉄を強制処理、合金添加する事により特殊鋳鉄の製造が盛んである。その代表的な物がダクタイル鋳鉄であり、その製造は上記ネズミ鋳鉄の溶湯に含まれる。S,Oを強制的に除去(脱酸処理、SiC、Mg、CaSi等の合金添加)する事により片状黒鉛が球状黒鉛に変化して著しく、機械的、物理的性質が向上する。
これらの溶湯を流し込む鋳型については、Vol.11「生型砂の品質管理について」でその詳細を述べる。