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溶湯性状判定冷却曲線状態図


溶湯の冷却曲線特性
冷却曲線特性17項目
(1)初晶温度(初晶点) ℓL
(2)共晶凝固温度(共晶点) E
(3)初晶凝固温度巾 LC
(4)凝固温度範囲 LE
(5)初晶凝固時間(液相線凝固温度)
(6)共晶凝固時間 e
(7)全凝固時間 s
(8)初晶温度勾配 tanθ
(9)初晶凝固時間比 ℓ/e
(10)過冷度
UC=E-C
(11)過冷点 C
(12)過冷度面積 A
(13)共晶凝固面積 B
(14)注湯温度 PT
(15)初晶から共晶点までの時間 ℓe-1
(16)過冷点から共晶点までの時間 CE
(17)共晶点から凝固点までの時間 EG

1 ) CEをよむ

溶解しているものが凝固する場合には必ず凝固点又は凝固開始点があり、鋳鉄においては化学組成によってその開始点が異なります。つまり凝固開始点(初晶又は初晶温度)を知る事によりCEが判ります。

このCEについては、C+1/3Si、C+1/3Si+1/3P、C+1/4Si+1/2P、C+0.3Si+0.3Pなどがあり、その解釈は一定のものではありませんが、各工場で操業条件が若干、異なるようにその条件に適合する管理図を書いてみる事が必要です。
そうすればCEメーターのカタログに書いてある表をそのまま用いられる工場と、少し修正をする必要がある工場と出てきます。一般的にはそれほど大きく修正する必要はありません。

2 ) 共晶点 をよむ

鋳鉄には凝固開始点があると共に凝固終了点(共晶点又は共晶凝固温度)があります。溶湯の主要合金元素C、Siのうち共晶点の変化にSiが大きく影響し、Si量が多くなれば共晶点は高くなります。つまり共晶点の高低によりSi量の多少を判断できるわけです。
その外にも共晶点はいろいろな利用価値(チル深さひけ巣等)がありますから初晶温度と共に冷却曲線の二大重要要素という事が言えます。

3 ) 凝固温度範囲をよむ (LE)

初晶から共晶までの温度差を凝固温度範囲(LE)とよんでいますが、この凝固温度範囲から溶湯のC%が判り、製品の抗張力や硬度等の機械的性質も測定できます。・・・テルルなし(白銑化)の場合

4 ) 過冷却をよむ(UC)

冷却曲線の初晶から共晶までの間に大なり小なりの過冷の減少が出てきます。
溶湯の冷却速度と結晶の成長速度とのバランスが崩れた時に過冷を生じるのですが、過冷の度合(過冷度 UC)とチルの度合とは密接な相関性があります。

一般に過冷度の大きいもの程チルの度合も大きく、同時に偏析も大きいものです。又、黒鉛は過冷度の2乗で成長すると云う即ち過冷度が小さいと、黒鉛の成長速度が遅いから厚い黒鉛層が大きな間隔で発生するのである。
過冷度が大きいと樹枝状オーステナイトの一次析出が起こり易くデンドライト間の隙間の共晶セル形成が制限されてしまう。

5 ) 凝固区間の時間をよむ (ℓとe の時間比)

初晶から、過冷却、共晶へと移行する時間を調べる事により鋳鉄の性質を推定することができます。初晶から過冷却までの時間(液相線凝固時間ℓ)と過冷却から共晶までの時間(共晶凝固時間 e)の二つをとってみますと前者が短くて後者が長いものと、これと反対に前者が長くて後者が短いものとではその溶湯の性質には大きな差があります(合計時間が同じ場合)。
一般に初晶から共晶に達するまでの時間のうち、液相線凝固時間が短く、共晶線凝固時間が長い方が良い溶湯と言えます。
・・・・黒鉛核の成長が良い

6 ) 共晶点より凝固終了点までの時間をよむ(接種効果) (EG)

共晶点が現れてから凝固終了点(EG区間)までの時間が長いものの方が、より接種効果があります。
・・・黒鉛形状、共晶セル数、黒鉛分布

7 ) 同じCE値の場合のキューポラ溶湯と電気炉溶湯の違い

キューポラ及び電気炉の溶湯性状の違い

①キューポラ溶湯の方が過冷度は少ない
②キューポラ溶湯の方がℓが短く、eの方は長い
③キューポラ溶湯の方が接種剤効果は大きい(Si%含有量)
④チル効果及び引け効果も、キューポラ溶湯の方が良い