TJFS-210: 生型砂のシリカプログラム試験方法
1. 適用範囲
生型砂のシリカプログラム試験方法について定める。
2. 用語の意味
シリカプログラムとは、以下の一連の方法で測定される、生型砂の化学分析方法である。
なお、本試験方法は、けい砂を基礎砂とした生型砂に適用する。
備考:ジルコン、クロマイト、オリビンのような特殊砂は、ふっ化水素酸に急激に溶解するので、
本試験方法を適用できない。
3. 試薬、器具および装置
3-1. 試薬
- メチレンブルー溶液・・・ TJFS-205(生型砂の活性粘土分試験方法)に定める溶液を用いる。
- 2%ピロリン酸ナトリウム溶液・・・ TJFS-205(生型砂の活性粘土分試験方法)に定める溶液を用いる。
- 50%塩酸・・・ 一級濃塩酸(HCl)を同量の純水に希釈する。
- 30%ふっ化水素酸溶液・・・ 含有率47%ふっ化水素酸溶液100 に対し、56 の割合の純水にて希釈する。
備考:ふっ化水素酸は通常、溶液として市販されており、含有率47%のものを購入するとよい。なお。ふっ化水素酸は毒物であり、取り扱いには細心の注意を払うこと。作業する際は、保護具として、眼鏡、ふっ化水素酸吸着剤入りマスク、ゴム手袋、前掛けなどを着用し、作業後は、手を流水でよく洗う。また、非常用として、重曹およびマグネシア乳剤(グリセリンと酸化マグネシウムを混ぜた乳剤)を備え付けておき、もしも、ふっ化水素酸が肌に付着したなら重曹を付けてから水でよく洗い、マグネシア乳剤を塗布して、医者に駆けつける。
3-2. 器具
- 円錐ビーカ・・・200ml のコニカルビーカを用いる。
- 自動ビュレット・・・50ml 定量用を用いる。
- フロン攪拌子・・・直径5mm、長さ25~30mm のものを用いる。
- ビーカ1・・・300ml のものを用いる。
- ビーカ2・・・100ml のテフロン製のものを用いる。
- 磁性るつぼ1 ・・・50ml のものを用いる。
- 磁性るつぼ2・・・30ml のものを用いる。
- 時計皿 ・・・直径100mmのものを用いる。
- ふるい1・・・ 呼び寸法22μm のものを用いる。
- ふるい2・・・ 呼び寸法53μm のものを用いる。
- 攪拌棒・・・ 直径5mm、長さ200mm のテフロン製のものを用いる。
- コマゴメピペット・・・ 15ml のポリエチレン製のものを用いる。
- pH 試験紙・・・ 市販のpH 試験紙のうち、pH5~7 が測定できるものを用いる。
3.3 装置
- はかり1・・・ 感度0.01g のものを用いる。指定のある場合以外はこれを用いる。
- はかり2・・・ 感度0.0001g の化学天秤を用いる。
- 超音波分散機・・・ 周波数25~30kHZ、出力150~200W のものを用いる。
- マグネチックスターラ・・・ ビーカ容量500ml のものを用いる。
3-4. 検査
この方法に使用する装置および器具の精度を保持するため、適宜所定の精度の有無を検査する。
4. 試験方法
4-1. 活性粘土分の定量
TJFS-205(生型砂の活性粘土分試験方法)に基づき、活性粘土分を測定する。
4-2. 強熱減量の定量
4.2.1 試料砂の強熱減量の測定
- 生型砂を105±5℃で恒量になるまで乾燥した後、デシケータ中に入れ、放冷したものを試料とし、約3gを乳鉢ですりつぶす。
- 質量既知の30ml の磁性るつぼに、はかり2を用いて、すりつぶした試料1gを計り取り、1000℃の電気炉中で1時間焼成する。
- デシケータ内で放冷した後、はかり2を用いて、質量を計る。
- 次式により、試料の強熱減量を算出する。
ここに
L.O.I.:強熱減量(%)
W1:焼成前の試料とるつぼの質量(g)
W2:焼成後の試料とるつぼの質量(g)
W3:W1-るつぼの質量(g)
4.2.2 けい砂の強熱減量の測定
試料砂に使用されているけい砂の強熱減量を、同様に測定する。
4.2.3 ベントナイトの強熱減量の測定
試料砂に使用されているベントナイトの強熱減量を、同様に測定する。
備考:強熱減量の測定方法は、TJFS-206(生型砂の強熱減量試験方法)とは異なる。
4-3. 炭素質分の定量炭素質分
次式により算出する
ここに
C :炭素質分(%)
L.O.I. :強熱減量(%)
AC :活性粘土分(%)
B.L.O.I.:ベントナイトの強熱減量(%)
S.L.O.I :けい砂の強熱減量(%)
備考:炭素質分の算出方法は、TJFS-209(生型砂の固定炭素量算出方法)とは異なる。
4-4. 全粘土分の定量
次のいずれかの方法により、全粘土分を測定する。
-
4-4-1. TJFS-204(生型砂の全粘土分試験方法)に基づき、全粘土分を測定する。
4-4-2. ふるい分けによる方法
- 生型砂を105±5℃で恒量になるまで乾燥した後、デシケータ中に入れ、放冷したものを試料とし、25g を300ml ビーカに計り取る。
- 2%ピロリン酸ナトリウム溶液250ml を加え、ガラス棒で時々攪拌しながら、超音波分散機に10 分間かける。また、4.4.1 の煮沸による分散方法でもよい。
- 分散した試料を呼び寸法22μm のふるい上に移し、適宜、流量を調整した流水で、水が透明になるまで洗浄する。
- ふるい上に残留した試料がビーカを移し、試料が沈降するまで静置した後、試料がこぼれないように、静かにビーカを傾斜して、上澄み液を排出する。
- 試料を105±5℃で恒量になるまで乾燥した後、デシケータ中に入れ、放冷した後、質量を計る。
- 全粘土分は、次式により算出する。
ここに
TC:圧全粘土分(%)
W. :残留した試料質量(g)
備考:その他の項目は、4.4.1 に準じる
4-5. 金属分の定量
- 全粘土分測定後の試料を質量既知の50ml の磁性るつぼに移し、1000℃の電気炉中で2時間焼成した後、デシケータ中に入れ、放冷した後、質量を計る。
- 焼成した試料を、300ml ビーカに移し、50%塩酸175ml を加える。次に、時計皿で蓋をして、ドラフト内で、サンドバスにて2 時間煮沸する。
備考:サンドバスとは、深さ20~30mm の鉄製容器(できれば、ステンレス製がよい)にけい砂を入れ、電熱器に乗せたものである。 - 煮沸後、放冷して、時計皿に付着している試料をビーカ内に洗い込む、次に水を注意深く加えて塩酸を薄め、試料が沈降するまで静置する。
- 試料が沈降したら、試料がこぼれないように、静かに傾斜して、上澄み液を排出する。さらに水を加えて、この操作を4 回繰り返して塩酸を薄める。
- 試料の呼び寸法53μm のふるい上に移し、4.4.2(全粘土分の定量・ふるい分けによる方法)と同様に操作を行って、ふるい上に残留した試料の質量を計る。
- 金属分は、次式により算出する。
ここに
M :金属分(%)
W1:焼成後の試料質量(g)
W2:残留した試料質量(g)
4-6. 不活性微粉の定量
不活性微粉は、次式により算出する。
ここに
DC :不活性微粉(%)
W :4.5(金属分の定量)における、塩酸処理後の試料質量(g)
AC :活性粘土分(%)
C :炭素質分(%)
M :金属分(%)
4-7. オーリティックの定量
- 塩酸洗浄後の試料5g を、100ml テフロン製ビーカに計り取る。
- ポリエチレン製コマゴメピペットを用いて、30%ふっ化水素酸溶液30ml を加え、直ちに、テフロン製攪拌棒にて1 分間攪拌する。次に1 分間静置した後、さらに1 分間の攪拌を行う。
備考:ふっ化水素酸溶液は微量ながら、けい砂をも溶解する。しかし、この試験方法で定めた処理時間であれば溶解量は無視し得る。従って、処理時間は正確に守られなければならない。 - 水 60~70ml を加え、2 分間静置した後、試料がこぼれないように、静かに傾斜して上澄み液を捨てる。さらに、水60~70ml を加え、1 分間静置した後、同様に上澄み液を捨てる。 この操作を2 回繰り返す。
- pH 試験紙を用いて、上澄み液のpH を測定する。pH が6 未満の場合は、6 以上になるまで再度、3)の水洗処理を繰り返す。
- pH が6 以上であれば水洗処理を終了し、ビーカに残留した試料を105±5℃で恒量になるまで乾燥した後、デシケータ中に入れ、放冷した後、質量を計る。
- オーリティックは、次式により算出する
ここに
O :オーリティック(%)
HW :4.5(金属分の定量)における、塩酸処理後の試料質量(g)
FW :ふっ化水素酸処理後の試料質量(g)
4.7 クォーツ分の定量
クォーツ分は、次式により算出する。
ここに
Q :クォーツ分(%)
HW :4.5(金属分の定量)における、塩酸処理後の試料質量(g)
FW :ふっ化水素酸処理後の試料質量(g)
解説
本試験方法は、従来行われてきた方法から大幅に改定している点があるので、以下に解説する。
1. 全粘土分測定方法について
測定操作の簡略化を図るため、ふるい分けによる分離方法を追加した。この方法は、TJFS-204(生型砂の全粘土分試験方法)よりも操作は簡単で、迅速に行うことができる。しかし、ふるい分けによる方法は、粒子の比重などには影響されず、粒子の直径のみによって分離されるので、TJFS-204(生型砂の全粘土分試験方法)による測定結果とは若干の差異が生じる。 N=30 の試料による比較試験を行った結果、ふるい分けによる方法は、TJFS-204(生型砂の全粘土分試験方法)による測定結果に比して、平均値で0.51%小さな値となった(max0.9%、min0.0%)。全粘土分は、通常10%を超える数値であり、この程度の差異は許されるものと判断し、採用した。
2. オーリティックの定量における、処理酸の変更について
オーリティック分の測定には、通常、りん酸による処理が行われている。しかし、りん酸処理によるオーリティックの溶解には20 時間以上を要し、通常、規定されている処理時間では、十分に溶解されていない場合が多い。そこで、処理時間の短縮と、より正確な測定方法の確立を目指して検討を行った。その結果、欧州で採用されているふっ化水素酸に着目し、種々の実験を行って、その処理方法を確立した。
N=30 の試料による比較試験を行った結果、ふっ化水素酸処理によるものは、りん酸処理による測定結果に比して、クォーツ分が平均値で約6%小さな値となった(max 14.9、min -4.5%1))。
- 注意1)
3点だけ、クォーツ分が多いものがあった。しかし、X 線回折によってクォーツ量を判定した結果では、全ての試料について、さらに低いクォーツ量を示しており、りん酸処理では、長石などの非クォーツ分が十分に除去されていないことが判明した。よって、ふっ化水素酸処理による測定法は、より正確な値が得られるものと判断し、本試験方法に採用した。